2019年度 第1回資格更新研修会報告

 ・去る4月21日(日)の午後に平野幹雄先生(東北学院大学)をお招きし、「大規模災害発生後の心理プロセスと、子どもと心理支援者への心理支援について」のご講演をいただきました。今回は、臨床発達心理士会員の方以外にも、隣接領域の専門職の方や大学院生にも開かれた公開講座としての開催で107名の参加がありました。
・ご講演では、被災地に身を置く研究者として客観的な視点で、当時から現在までの被災者の様子、調査データから見えてくる落ち着かない子どもやその親の現況と課題、支援のあり方などをお話しくださいました。また一方で、ご自身の被災体験やPTSDが生じる過程から回復に向かうまでの長いプロセスを、理論とすり合わせながらわかりやすく説明くださいました。どのトピックスにも、あらためて考えを深める問いがたくさんありましたが、中でも子どもへのケアはもちろんのこと、その親のトラウマ体験へのケア、また「支援者への支援ニーズ」の大きさについては印象に残りました。子どもの安全基地になるべく大人への支援の必要性、そのうえで子どもが安心、安全に活動できる日常の環境づくりの大切さを教えていただきました。
・「臨床発達心理士として何ができるのか。」この問いに対し、支援においては、被災された方それぞれの経験したこと、事情、状況が異なることを踏まえていかなければ、逆に被災者を傷つけることにもなりかねないという助言もいただきました。急性期の支援は物理的、医療的ケアが優先されるため、心理士は心理支援よりコーディ―ネーターの立ち位置でかかわりながら、そして「いつでも待っている」というスタンスで「縁を切らずに、声をかける」存在でいられると、被災者の力になれるのではないかとご示唆もありました。
・震災後の急性期状態を乗り切った後、まだまだ復興が進まない中、問題が長期化していくにつれ、さまざまな人に多面的なアプローチでの心の支援が重要になっていることを学んだ一日でした。
・ 来る6月30日には、平野先生が携わっておられます臨床発達心理士会災害支援員会主催の研修が同じく京都教育大学で開催されます。皆様奮ってご参加ください。 申し込みは士会ホームページ、資格更新研修会のページの「全国研修会WEB申し込み」かからお願いします。締め切りは22日です。