2019年度 第2回資格更新研修会報告

「Vineland-Ⅱを活用した理解と支援」

   7月20日(土)に黒田美保先生(名古屋学芸大学、日本臨床発達心理士会幹事長)をお招きし、京都ノートルダム女子大学にて、「Vineland-Ⅱを活用した理解と支援」について研修会を開催しました。
  黒田先生は、日本版Vineland-Ⅱ適応行動尺度の作成チームメンバーのおひとりでもあります。今回の研修会では、京都のほか全国北から南までの幅広い支部から全72名の参加があり、「適応行動の評価」という、日本におけるアセスメントの新機軸に対する関心の高さが伺えました。

  対象者、特に発達障害特性のある方のアセスメントにおいては、従来から主流として用いられている知能検査や性格検査では、日常生活上の適応状態を客観的に把握しにくいことが少なくありません。対象者の知的水準と適応状態との乖離をどのように説明するか悩んだ経験は、多くの方にあるのではないでしょうか。
  講義ではまず、発達障害のアセスメントについて、どういったものを組み合わせて対象者の特性やニーズを把握するか、そしてその結果をどのように支援計画の策定や検討、修正に活用するか、というフローをご説明いただきました。 そして「適応行動」とは、年齢、個人が関わる環境の期待や基準によって、重要となるものや評価が変化すること、環境の影響や支援効果によって変容の可能性があること、評価においては行動そのものに注目すること(できるか、ではなく、しているか)、と整理していただきました。

筆者の個人的には、ASD特性のある対象者の知的水準ごとの得点の比較、そして高機能ASD群、ADHD群、視聴覚障害群と対照群の得点の比較データの紹介を、非常に興味深くお聞きしました(マニュアルにも紹介されていますので、お持ちの方はご参照ください)。
改めて、算出された数値だけに注目するのではなく、回答の詳細や他の場面での観察と組み合わせて、対象者を理解していくことの重要性を実感することができました。

後半は、実施方法や結果の算出について、ロールプレイを交えつつじっくりとご教授いただき、最後に架空事例の結果から支援計画を立てるワークを行いました。

まとめとして黒田先生からは、幼児期は、獲得できている適応行動や芽生えの見られる行動を活かして、わかる・できる経験を促し・拡げる関わりを考えていくこと、一方成人期では、なんとかやっていけることと本当にできないことを把握し、サポートも活用しながらの本人なりの自立の形を模索していくことが重要、とお話しいただきました。 評価ツールの研修を通じて、自分自身の発達支援に臨む姿勢や、社会参加・社会適応の考え方についても、自己覚知を促される1日となりました。

次回は、10月6日(日)午後に、事例報告会を京都教育大学で開催する予定です。詳細・申込方法は、後日メールおよび支部ホームページにてお知らせします。皆さま奮ってご参加ください。